民間助成財団の「研究助成]に関する応募に当たって
はじめに
民間助成財団への応募に際して先ず留意したいことは、各財団はそれぞれの設立意図や趣旨を反映した「定款」にもとづく事業目的を設定しているため、その助成は多様性に富んでおり、一律には捉えられないということです。
そのため、研究者は各自の研究計画に見合った助成金を探索し、その目的や仕組み等の詳細を予め的確に把握することが大切です。
応募に際しての留意点
応募に際しては、民間助成財団が助成事業を通じて達成しようとしている社会的な目的を十分理解したうえで、それと関連の深い研究計画を作成することが必要となります。その際には、「応募要項」を熟読したうえで研究計画を「企画書(申請書)」に記載しますが、その場合、以下の点に留意してください。
1.情報の収集
- 助成の趣旨(応募先が要求している研究はどのようなものであるか)をよく理解する。
- 研究期間や研究体制、応募金額や助成金の使途などに関する制限事項を把握する。
- 過去の助成実績や傾向を確認する。
- 「科学技術・イノベーション基本計画」など科学政策関連のトレンドも把握しておく。
2.企画書の作成について
- 多数の応募に関する選考は減点法となる傾向が強いため、弱点は晒さない。
- 選考委員は応募内容に関する専門家とは限らないため、読み手を意識したうえで『いま、なぜこの研究が必要なのか』、『いま、なぜ自分が取り組むのか』について熱意を込めて強調する。
- 記載に関わる表現技法にも注意する。例えば、①興味をひくテーマ設定(サブテーマも含む)を心がける。②研究目的や内容・方法については、専門用語の使用は出来るだけ控えめにし、簡潔で分かりやすい表現とする。③研究内容・方法と実施スケジュールや助成金の使途内訳との整合性を図る。また、④すでに進行中の内容については、より発展的な形でアッピールする。
3.その他
- 全体を通して見みやすく、分かりやすく記載する(図表や写真の適切な挿入等アートワークにも工夫する)。
- 助成期間内に「何を」どこまで達成するかを明示する。
- 研究概要(サマリー)がある場合、選考委員の注目度は高くなるため、特に注力する。
- 他財団や公的な助成金を受領または応募中の場合は、それらの資金との関係を出来るだけ正確に記載する。
- 研究実施に関わる事情(立ち上げたばかりの研究室、帰国して間もない、etc.)があれば、可能な範囲で記述する。
- 形式違反(必要項目の未記入、勝手に紙面を増やす等)はしない。 以上により、応募された研究計画が、当該財団の助成によって①一定の成果が見込め、②論理的かつ実際的に遂行可能であり、それにより、③社会の課題に応えられる価値あるものであること等を企画書を通して選考委員に伝えることが重要となります。
おわりに
民間助成金の獲得に向けた研究企画の“肝”は、「社会との関係性」を基本に、<リスク(先見性)>、<チャレンジ(独創性)>、<インパクト(波及性)>を意識した内容とすることが大事です。
公益目的を有する民間助成財団にとって、助成金は社会的な目標を達成するための手段であり、助成金を提供すること、それ自体が最終的な目的ではない、ということをご理解いただきたいと思います。
なお、助成財団センターでは、大学や研究機関等に所属するリサーチアドミニストレーター(RA)および研究者の方々を対象とした「研究推進/支援担当者のための研修セミナー」を年2回程度開催しています。ここでは、「民間助成金の獲得に向けた留意点」をテーマに、助成財団の個別具体事例も交えた報告や質疑応答などの機会を設けています。助成金の応募をお考えの方々にとって大いに参考となるセミナーですので、ぜひともご参加をお勧めいたします。
特別寄稿 渡辺 元(Gen Watanabe)
・公益財団法人 助成財団センター 理事
(公財)トヨタ財団のプログラム・オフィサーとして、研究および市民活動等に関する助成事業の開発・運営に長年携わり、その後はプログラム部長・事務局次長。
この間、都留文科大学非常勤講師、立教大学大学院特任教授を務めたほか、NPO法人市民社会創造ファンドの立ち上げにも携わり、現在、副理事長。
2013年1月より(公財)助成財団センターへ。プログラム・ディレクター・事務局長を務め、2019年6月より理事。2014年4月より立教大学大学院客員教授も併任。