助成金とクラウドファンディングのシナジー効果
昨今、クラウドファンディングに挑戦される団体が増えていますが、クラウドファンディングを助成金事業に活用されてはいかがでしょう。
実際、助成金には、図1のようなメリットとデメリットがあります。そして、この助成金のデメリットの解消に、クラウドファンディングを役立てることができます。自己負担金部分の補完や、金額的、使途的、時期的に助成金で賄えない経費の調達にクラウドファンディングが活用できます。
たとえば、障害者施設の建設費用を助成金で調達した団体が、施設内の作業所の部分をクラウドファンディングによって補完する、利用者と施設の往復のためのマイクロバスをクラウドファンディングで購入する、といった方法です。
そもそも、非営利団体には、寄付、会費、助成金、事業収入といった多様な財源があり、各種財源間のシナジー効果を考えることが資金調達の基本だとされています。
具体的には、図2のように、助成金を獲得した団体は社会的信用力が増して寄付者や会員が増え、寄付者や会員は団体を応援する気持ちから、その団体の提供するサービスや商品を購入して事業収益の拡大に貢献してくれる・・・事業収益をあげている団体はその実行力をアピールすれば、助成金の審査時にプラスになる・・・また、助成事業を通じて新しい収益事業が生まれ、その事業を通じて団体を知った人たちが団体の寄付者や会員になり、寄付者や会員が多い団体は公益性のある団体と評価されて助成金の対象となる・・・といったようなシナジー効果、いわば好循環を念頭において資金調達の計画を立てていくこと求められます。
オンライン上の寄付キャンペーンとしてのクラウドファンディングと助成金のシナジー効果についても、図3のように考えることができます。
助成事業の中から、クラウドファンディングに適した、新しい事業企画が生まれることがあるでしょう。また助成金の獲得は、社会的信用力の向上となりますから、クラウドファンディングでの応援を検討する人たちの後押しとなるものです。そして、クラウドランディングを成功させたら、その実績は、団体の公益性や実行力の証明となるので、助成金申請の際には、ぜひアピールしたいものです。
一見、関連性が少ないように思える、助成金とクラウドファンディングも、そのシナジー効果を狙うことで、より効果的なファンドレイジングにつながります。
特別寄稿 徳永 洋子(Yoko Tokunaga)
- 日本ファンドレイジング協会理事
- 佐賀未来創造基金理事
- 日本吟剣詩舞振興会理事
- 社会貢献支援財団評議員
- かわさき市民しきん評議員
三菱商事、日本フィランソロピー協会、シーズ・市民活動を支える制度をつくる会の勤務を経て、2009年に日本ファンドレイジング協会に入職。2012年6月より2014年末まで同協会事務局長をつとめた。2015年2月に「ファンドレイジング・ラボ」を立ち上げ、NPOのファンドレイジング力向上と寄付文化の醸成を目指して、講演、コンサルティング、執筆などを行っている。法政大学非常勤講師。著書「非営利団体の資金調達ハンドブック(第5刷)」(時事通信社)。